忘れた!

クリスマスですねえ。セネガルは人口の90%以上がモスリムですが、クリスマスは祝日、首都の道路にもクリスマスの飾りつけがされています。

クリスマス、という表現もスペイン語とフランス語では随分違っていて、スペイン語が la Navidad なのにフランス語は le Noël です。スペイン語の Navidad は女性名詞、フランス語の Noël は男性名詞ですから、語源が全然違うのでしょうね。

ちなみにクリスマスの挨拶、英語の Merry Christmas にあたるのは、スペイン語が

Feliz Navidad

フランス語が

Joyeux Noël

です。

というところで、今回の本題。「忘れる」という表現を取り上げたいと思います。英語の I forgot. 、「忘れちゃった」をどう言うか。

スペイン語 Se me olvidó.
フランス語 J’ai oublie.

スペイン語の場合、動詞は olvidarse で、再帰動詞になっています。フランス語にも再帰動詞は存在しますが、この単語は再帰していません。どうもスペイン語のほうが再帰を使うケースがフランス語より多くて、両言語のニュアンスの違いがあるのかなあ、と思っています。

さらに実はスペイン語には Me olvidé という表現もあるのですが、筆者は一度も聞いたことがありません。筆者が聞いた、そして使っていた表現は

Se me olvidó.

であって、自分、つまり me は目的格になっています。olvidarse するのは、多分忘れられてしまった何かであって、まるで自分は被害者、忘れた責任がない?!というのがスペイン語の世界。まあこう言ってしまうと言い過ぎかもしれませんが、筆者が暮らしたのは何事もアバウトのラテンアメリカ、それも大田舎でしたから、筆者の実感としてはやはり「自分が忘れたんじゃない」と言っているように思えたわけです。

この点フランス語は潔く、

J’ai

と、自分が忘れた主語であることを明確にしています。ここが前回の記事とつながるところだと思うのですが、フランス語で筆者の周辺で malheureusement (運悪く)という単語をよく聞くのは、自分の責任を曖昧にする表現が豊富なスペイン語と違い、単語を付け足して、どこかにそのニュアンスを入れなければならないからではないか、という気がしています。

無論これは筆者が自分の暮らし、仕事をしている環境の中で感じたことでしかありませんので、その点はご承知おきください。筆者が暮らした、暮らしている環境は、スペイン語圏はラテンアメリカ、フランス語圏は西アフリカであり、スペイン・フランス両国ではありませんから。