pied à piedとは?

わが町にLa patisserie pied a pied(ラ パティスリー ピエアピエ)というケーキ屋さんがあります。 pied a pied の a には本当はアクサンが付いて à なのですが、それはともかく。pied à piedはフランス語で1歩ずつ、という意味で、そこから「徐々に」とか「段々と」という意味を持っています。

このお店、日本語読みでは「ピエアピエ」になっていますが、あれ?pied の次に a が来たらリエゾンしてピエタピエになるのでは?という疑問が。検索してみると、 pied a pied でピエタピエと読んでいるところも。

そこで調べてみると、まず各言語の発音をしてくれるサイトで聞いてみると、「ピエアピエ」に聞こえます。別のサイトで発音記号を調べてみると、pje(.t‿)a pje とありました。tは括弧に入っています。つまり「どちらも正解」なのですね。

no problem

今回の表現は「問題ない」という意味、英語の no problem です。

この表現はスペイン語でもフランス語でも大差なく、

no hay problema (西)

ya pas de problem (仏)

となります。フランス語は主語を落とさないのが普通で、Il n’ が本当は頭に付くはずですが、これは慣用化しているためか、ya あるいは pas から口に出されることが多いようです。

しかし、この言葉。やはり文化を反映するようで、筆者が昔住んでいた中米では no hay problema と言われたら「問題ない」「大丈夫だ」というよりも、さすがラテン系と言うか「気にするな」くらいのニュアンスだったような気がします。

ここ西アフリカはイスラム教徒が大部分です。ここでの ya pas de problem の裏には「インシャラー」が隠されているようです。インシャラーというのは、イスラム教で「アラーの思し召しのままに」ということです。つまり「もし神の思し召しがあれば」という条件付で「問題ない」になるようです。

いつものことだ

さて今回のお話は「いつものことだ」「いつものように」というような表現です。英語だと as usual かな。

まずフランス語から。

comme d’habitude (あるいは d’habitude だけ)

habitude は習慣、というような意味で、スペイン語だと costumbre がニュアンス的に一番近いように思います。そしてスペイン語にも

como de costumbre

という表現が存在しています。しかし筆者はあまりこの表現は聞いたことがありません。いつも聞いていた、そして良く使っていたスペイン語の表現は

como siempre

そのまま直訳しても「いつものように」です。筆者が暮らしていたのは中米の大田舎、変化のない毎日が続くところでしたから、この言葉を使うのは多くの場合「今日も同じだよ」「変わったことなんかないよ」というような否定的なニュアンスであることが多かったように思います。まあこれは筆者の特殊事情ですが。

いつものにしましょう

筆者の同僚でフランス語がうまい島調の使い方を聞いていると、例えば「今日の昼飯はどこで食べようか?」というようなときに

Comme d’habitude.

「いつものところにしましょ」というようなニュアンスで使ったりもしています。

うんち・おしっこ

まず前回書いた「ヌキテパ」という言葉で検索する人がいる、という話ですが、読者の方から以下のような情報をいただきました。

「さて、ヌキテパ、ですが、東京品川にあるフレンチレストランの名前のようですね。結婚式の披露宴もしているみたいだし、テレビや雑誌などで取り上げられている有名なところみたいです。」

うーん、「そのまま切らずにお待ちください」という名前のレストランがあるとは…。確かに語呂は面白いですが。

話は変わって、私は妻や息子と離れて暮らしているのですが、ニューヨークでメキシコ人のやっている託児所に通う1歳の息子は、最近「ボイ」という言葉を家でも口にするとか。これがどうやらスペイン語の「行く」の voy らしいのですが、意味がわかっているのかどうか。

託児所では家で覚えた日本語の単語も時々口に出して「あち!」(熱い)なんて言っているそうです。

さて私の方は現在健康診断をアフリカで受けているのですが、こちらのシステムは、検査項目ごとに別々のラボに行って受信しなくてはなりません。血液検査はここ、胸部レントゲンはここ、消化器系はここ、といった感じで面倒くさいこと。

フランス語・スペイン語で「血液検査」

それはともかく、フランス語の入門書を見ても、例えば血液検査、なんていうシチュエーションはあまり登場しません。

英語で blood test と言いますが、フランス語では

analyse de sang

スペイン語だと大して変わらず

análisis de sangre

と言うのが普通のようです。

フランス語でウンチ・おしっこ

もう少し書いておくと検査書などに出てくる尿とか便という表現は、英語でもそうですが、あまり普段使わない単語が使われます。

 英語フランス語スペイン語
便fecesfaecesheces
尿urineurineorina

スペイン語だけ尿のスペルが違っていますが、「小便所」「小便器」「小便の」という意味の単語には urinario というのがあります。

さてこれらは、それこそ健康診断のときくらいにしかお目にかからない単語ですが、小さな子供がいる我が家に普段関係するのは「うんち」「おしっこ」のレベルの単語です。息子は「うんち」はまだ言えず、おしっこのことも「ちっち」と言っています。

 英語フランス語スペイン語
うんちpoupoucacacaca
おしっこwee/peepipipipí

うんちをする、おしっこをするはフランス語だと faire をつけ、スペイン語だと hacer をつけますが、フランス語でもこの場合 faire pipi となって、珍しく?!冠詞が付かないんですねえ。

しかし検査に行ったら、血液検査は日本とまったく同じ。ところが検便は、容器を渡されるのかと思ったら、弁当箱のような金属の箱を手渡され、「じゃあこの中にしてね。トイレはここね。」出かける前に出が悪かったから残っていたものの…。

ce n’est pas la peine

先日はニューヨークへ行っていたのですが、英語とかスペイン語をしゃべっているのに、きなり「ウイ!」なんて言って妻に笑われてしまいました。どうもこういう慣用的な表現は、すぐに他の言語に切り替えるのが困難なようです。

ニューヨークをたつ予定だった日は、記録的な豪雪の日に当たってしまい、飛行機はキャンセル。航空会社が「飛ぶ飛ぶ」と主張するので苦労して空港までたどり着きましたが、まったく損をしました。

さてこういう時にどういう表現をするか、というのが今日のテーマです。

ce n’est pas la peine de (que) ~

フランス語でよく耳にする表現がこれです。peine というのは痛みとか労苦というような意味で、「わざわざ~する必要はない」というようなニュアンスになります。「空港に行く必要はない」というのはこんな感じでしょうか。

Ce n’est pas la peine de aller a l’aeroport.

不思議なことに、この表現の肯定形はいまだかつて耳にしたことがありません。辞書を調べても、否定形の例文しかでていないところを見ると、慣用文としては否定形のみで使うのかもしれませんね。

一方スペイン語で peine に該当する単語は pena です。

スペイン語では同じような表現をやはり pena を使って作れますが、少々異なっています。

No vale la pena ir al aeroporto.

ニュアンスとしては、「~することは労苦に値しない」つまり「する必要はない」という感じかな。

スペイン語のこの表現では肯定形もよく耳にしました。

Vale la pena!

というような間投詞的な表現で、「やったかいがあったなあ」「報われたなあ」というようなニュアンスを表現していました。

話はがらりと変わりますが、去年の9月に書いた「ヌキテパ」(電話で「きらずにお待ちください」の意味)のバックナンバーをホームページに掲載してあるのですが、「ヌキテパ」をキーワードに検索をかける人がかなりいるのです。うーん、どういうシチュエーションで「ヌキテパ」を調べることになったのか、聞いてみたいところです。

それだけ

今回取り上げるのは、「それだけ」という表現です。シチュエーションは、あるレストランで何か注文したと思ってください。日本語ならお客さんが「以上です」あるいはウェイトレス・ウェイターさんが「以上でよろしいですか?」と聞く時の表現です。英語なら That’s all. でしょうか。

筆者はスペイン語圏として初めて足を踏み入れたのは中米のグアテマラ、その次が隣国のホンジュラスでした。これらの国のレストランで注文を終えて、ウェイトレスさんに言われたのは Solamente? でした。

この表現を聞いた時に、筆者も、筆者と同行していたほかの日本人もいささかむっと来ました。なぜかと言うと、この solamente は「たったそれだけ」という時にも用いる単語だからです。なので「それでおしまいなのか?」とつっけんどんに言われているように感じてしまったわけです。

その後グアテマラからホンジュラスまで、通算で2年3ヶ月暮らしましたが、ほとんど常に solamente でしたから、別にウェイトレスさんの表現の仕方の問題ではなく、このあたりでは、こう表現するのである、ということが理解できました。無論若かりし筆者が高級レストランに出入りしていたわけではありませんから、まあそれなりのレベルのお店の話だと思ってください。

さて、所変わって仏語圏アフリカのセネガル。フランス語で solamente にあたる単語は soulement です。ですからこの単語を使うかと思いきや…一度もレストランなどのシーンではお目にかかった…じゃなかった、耳にしたことがありません。当地で一般的な表現は、英語の that’s all にあたる、

C’est tout.

これです。

忘れた!

クリスマスですねえ。セネガルは人口の90%以上がモスリムですが、クリスマスは祝日、首都の道路にもクリスマスの飾りつけがされています。

クリスマス、という表現もスペイン語とフランス語では随分違っていて、スペイン語が la Navidad なのにフランス語は le Noël です。スペイン語の Navidad は女性名詞、フランス語の Noël は男性名詞ですから、語源が全然違うのでしょうね。

ちなみにクリスマスの挨拶、英語の Merry Christmas にあたるのは、スペイン語が

Feliz Navidad

フランス語が

Joyeux Noël

です。

というところで、今回の本題。「忘れる」という表現を取り上げたいと思います。英語の I forgot. 、「忘れちゃった」をどう言うか。

スペイン語 Se me olvidó.
フランス語 J’ai oublie.

スペイン語の場合、動詞は olvidarse で、再帰動詞になっています。フランス語にも再帰動詞は存在しますが、この単語は再帰していません。どうもスペイン語のほうが再帰を使うケースがフランス語より多くて、両言語のニュアンスの違いがあるのかなあ、と思っています。

さらに実はスペイン語には Me olvidé という表現もあるのですが、筆者は一度も聞いたことがありません。筆者が聞いた、そして使っていた表現は

Se me olvidó.

であって、自分、つまり me は目的格になっています。olvidarse するのは、多分忘れられてしまった何かであって、まるで自分は被害者、忘れた責任がない?!というのがスペイン語の世界。まあこう言ってしまうと言い過ぎかもしれませんが、筆者が暮らしたのは何事もアバウトのラテンアメリカ、それも大田舎でしたから、筆者の実感としてはやはり「自分が忘れたんじゃない」と言っているように思えたわけです。

この点フランス語は潔く、

J’ai

と、自分が忘れた主語であることを明確にしています。ここが前回の記事とつながるところだと思うのですが、フランス語で筆者の周辺で malheureusement (運悪く)という単語をよく聞くのは、自分の責任を曖昧にする表現が豊富なスペイン語と違い、単語を付け足して、どこかにそのニュアンスを入れなければならないからではないか、という気がしています。

無論これは筆者が自分の暮らし、仕事をしている環境の中で感じたことでしかありませんので、その点はご承知おきください。筆者が暮らした、暮らしている環境は、スペイン語圏はラテンアメリカ、フランス語圏は西アフリカであり、スペイン・フランス両国ではありませんから。

不幸にして

またまた発行間隔があいてしまいました。仕事を終え、家にまっすぐ帰ると、息子を遊ばせ、ご飯を食べさせ、また少し遊んで、お風呂に入れて、寝かしつけて、とやっていると午後10時過ぎ。そこから現在進めている英語の本の翻訳作業(来年前半には出版予定)とか、インターネットを通して講師をしている大学院生からのメールに目を通し、なんてやっていたらもう時間はありません。でも何とか時間を確保して、発行間隔が開いても続けたいと思っています。

さて今回は「不幸にして」「運悪く」という単語についてです。現在滞在しているセネガルでは、かなり頻繁にこの単語を耳にします。フランス語の教室でも、習ったことが無かったこの単語は、少々長いですがこれです。

malheureusement (発音は「まるるーずもん」)

本国フランスで、この単語を頻繁に使うのかどうかわかりませんが、どうも筆者には、こうした単語を使うのはお国柄とか、民族性とかの方が色濃く影響しているように思われます。

ではこれに該当するスペイン語はなんだっけかなあ?と思い出そうとして出てきたのが

lamentablemente, desafortunadamente

などですが、実は筆者は通算すると2年8ヶ月あまりになるラテンアメリカ・スペイン語圏での滞在で、これらの言葉を耳にしたことが一度もありません。

つまりラテンアメリカでは、思うように行かなくてもある意味当然と受け止め、開き直る?!のが国民性で、セネガルでは、少なくともリップサービスとしては「いや頑張ったけど運悪く…」とエクスキューズするのが国民性なのかなあ、などと考えています。まああまり根拠は無いですが。

次号はこのあたりにも関連する「忘れちゃった」という言葉を取り上げたいと思っています。

長い一日

いてみたいネタはいくつかメモしてあるのですが、その中から今日は、フランス語を習い始めた当初にとても気になった「今日」と「今」を取り上げたいと思います。

さてスペイン語で今日はとてもシンプルに hoy だけです。きっとフランス語もそんなものだろうと思っていたので、最初に今日という単語を聞いたときには面食らいました。

aujourd’hui

「オージョー・・・なんだっけ?」

たいていの言葉は、よく使う単語は短くシンプルになっている傾向があります。ですから aujourd’hui にもひょっとしたら短いフォームがあるのでは、と思ったのですが、ない。

よくよく観察してみると、au jour de hui と分解できそうにも見えます。「ふむふむ、ひょっとすると、huy が今日で jour が日だから『今日という日に』みたいなニュアンスかな」なんて想像しています。でも huy という単語単独では存在しないようです。

まあ単に想像だけなのですが、おかげで aujourd’hui を意味のある言葉として覚えることができました。

そしてもうひとつ「長い!」と思ったのが今です。英語なら now スペイン語なら ahora 日本語なら今と、みんなとても短いのですが、フランス語の場合は maintenant !これも覚えにくい言葉でした。

「今すぐやって!」とか「今だよ!」と言うのにも、英語なら now! right now! スペイン語なら ahorita! とか ahora mismo! とか言えば簡単かつ、雰囲気がそれなりに出るのですが、maintenant! だとなんだか間が抜けてしまって力が入りません。

そうしたら、「すぐに」の意味での「今」は tout de suite と言うのが一般的なのでした。

パ pas

前の発行からまたまた随分時間がたってしまいました。仕事が本業も副業も(何が本業で何が副業?)いそがしい状況が続いている上に、毎日ダイエットのためにプレステ2の Dance Dance Revolution で30曲くらい踊っているので、そのため疲れてしまう?!からもあります。

それともう一つ大きな理由には、フランス語圏にやってきて時間がたち、フランス語が全然うまくならないわりには初期の頃の新鮮な驚き、とか、好奇心とかが薄れつつあることもあります。まあしょうがないと言えばしょうがないですね。

本当はメルマガをあと3誌くらい出すアイデアは持っているのですが、地獄を見そうなので見送っているところです。

さてそれはともかく今回のお題は「パ」です。そう、フランス語で否定の時に使う pas です。

スペイン語とフランス語でよく似ている表現に「知りません」があります。

(Yo) no sé.

Je ne sais pas.

スペイン語では「ノ・セ!」を非常によく聞きますし、筆者もよく使っていました。この思い出としては、筆者22歳の時に某国の地方都市で友人宅にいたとき、遊びに来た現地の女の子が筆者の顔をしげしげと眺めて

Porque eres tan guapo?

と聞いたのです。筆者は当時結構ハンサムでした。いきなり不意打ちのように若い女の子にそんなこと言われた筆者は焦りまくり、口をついて出てきた言葉が ¡No sé! でした。

あとであのとき ¡Es para ti! (君のためだよ)くらい気のきいた言葉を言っておけばよかったと後悔しましたが、若かりし山出しの?筆者にはその余裕はありませんでした。

閑話休題。

話を戻してフランス語を齧ってすぐにスペイン語に似ているので

Je ne sais pas.

は覚えてしまったのですが、どうもこの最後の pas がしっくり来ません。もちろんフランス語では否定文を作る時にはお定まりのように付いてくる単語です(他の単語に変わることもありますが)。

では pas はいつも否定語の ne と一緒に使われるかと言うとそうでもなく、例えば

pas encore (パザンコー)

で「まだ」という意味になります。スペイン語なら todavia no でしょうか。これ以外にも

pas cher

で「安い」とか、

pas de problem

で「問題ない」とか、口語では否定文の頭を省略してしまって、英語で 「not なんとか」「no なんとか」という表現を使うような感じで pas を使うようです。

上にあげたものは結構よく耳にする成句のような感じがしますが、先日は、筆者の家で働くお手伝いさんのジュリエットさんに「今晩は外食するよ」と言ったところ、

pas ici?

と聞き返してきました。「ここ(うち)じゃないのね?」という意味ですが、どうやら pas は口語では否定したいものの頭にくっつけてかなり自由に使って良いようです。英語やスペイン語みたいに no とか not に該当する ne を使わずに pas を使う、というのがどうも最初とっつきにくかったのですが、慣れてしまえば同じようなもののようです。

持続的開発

10月に休暇をとろうと思って職場に休暇の申請を出しているのですが、なかなか手続きが進みません。その理由はと言うと、皆さんもご存知かと思いますが、先日まで南アフリカのヨハネスブルグで開催されていた環境・開発会議です。日本の首相は参加して、環境問題に不熱心なブッシュさんはパスした、あの会議です。

この超大型の国際会議が筆者の休暇にどのような影響を及ぼすのか?!まあ直接の影響は無いのですが、筆者の勤務する機関の上層部が会議に出席のために不在にしていたため、書類の処理が遅れているのです。途上国ではトップにしか決済の権限がなかったり、ということが多く非常に非効率な面があります。日本なら休暇の認定は人事部がやって社長がするわけではないと思うのですが、ここはサインの国。秘書がトップのはんこを管理している、ということはありません。

さてこのヨハネスの会議での議題が「持続的開発」というやつです。実は筆者の仕事もこれに大きく関わっているのですが、仕事の中身に関するメールマガジンではないので、今回は言葉としてこの「持続的開発」を取り上げようと思います。今までは普段使う言葉の表現を取り上げていましたが今回はムズカシめの専門的単語ですから、ちょっと違う趣向になります。

「持続的開発」は英語で言うと sustainable development です。これはスペイン語だと確か desarrollo sostenible です。development がスペイン語だと desarrollo と、ちょっと異なる単語になりますが、「持続的な」というほうは同語源の良く似た単語が使われています。

さて、ではフランス語では…同語源の言葉を組み合わせて développement soutenable になるかと思いきや、そうはならなくて développement durable と言います。

développement は英語の development にそっくり、というか、多分フランス語の単語の方が先にあったのでしょうけれど、なぜ durable になるのか、sustainable に対応する soutenable がなぜ使われないのか、とても不思議でした。durable は英語では「壊れにくい」というようなニュアンスですし。

そこで辞書を引いてみると、フランス語の soutenable には、「(意見などが)支持できる」という意味しかありませんでした。「持続する」という意味はないようなのです。一方英語やスペイン語にも「意見を支持する」という使い方はありますが、辞書でも第一義とはなっていません。

durable は英語でもフランス語でもスペイン語でも、「壊れにくい」「永続的な」という意味で、sustainable のニュアンスとはちょっと違うと思います。durable は人のかかわりに関係なく「壊れにくい」ですが、sustainable は「人が持続させる」という意味合いがありますから。

フランス語に「持続的な」という意味での sustainable に該当する単語が無いため、durable が使われているのではなかろうか、と推測しています。

おまけ

最近「千と千尋の神隠し」のDVDを手に入れました。なんとこのDVD、英語はないのにフランス語の吹き替えが入っています。そこで「これはフランス語の教材にいいかも!」と思い、「他のDVDはどうだろう?」と Amazon.co.jp で調べてみたら…吹き替え言語が明記されているものとされていないものがあって、よくわかりませんでした(ーー;)。

ヌキテパの意味 Ne quittez pas

ヌキテパはフランス料理店?!

日本に帰国してから、「ヌキテパ」の意味を調べるために検索をかけている人が結構多いことに気付きました。え?ヌキテパみたいな、こんな実用的なフランス語の表現を調べている人がなぜそんなにいるのか?と思って、自分でも検索をかけてヌキテパを調べてみると、どうやら五反田にある有名なフランス料理店の名前がヌキテパだとわかりました。

以下はフランス語、ヌキテパの意味の解説です。

フランス語でヌキテパの意味は

さて今回のお題は「ヌキテパ」です。フランス語です。最初言われたときにはどうつづるのやらさっぱりわかりませんでしたが、シチュエーションから意味はすぐわかりました。

電話をかけて秘書が出て「○○さんいますか?」という問いかけに対して「ウイ、ヌキテパ」だったのです。そう、「しばらくお待ちください」の意味です。

「ヌ」と「パ」は ne pas で多分否定命令の形になっているだろう、というのはすぐわかりましたが、「キテ」の部分をスペイン語から想像しようとしてもうまい単語が思い浮かびません。

はて、スペイン語で「お待ちください」をなんて言ったのかと思い出そうとしましたが、かなりくだけたun momento くらいしか思いつきません。丁寧に「お待ちください」という表現が思い当たらないのです。

というのも、実は筆者はスペイン語を使っていたときは、電話どころか、電気も、商店も、水道も何もないところで暮らしていたのです。ですから、去年ボリビアに行って首都に住んだときにも、大家さんに「水道の蛇口」と言おうとして単語が思いつかずに困った経験があります。

まあそれはともかくヌキテパに話を戻すと、島調に聞いてみると、キテは quitter の命令形 quittez でした。quitter はスペイン語なら quitar(se) 英語なら quit に相当する単語のようです。

でも quitar や quit ともこの場合はちょっとニュアンスが違って、quitter は「去る」「離れる」という意味合いが強いようです。ですからフランス語のヌキテパは

Ne quittez pas.

で、「(受話器から)離れないでください」という程度の意味なのでしょう。

Es mejor

現在ニューヨーク在住の妻と1歳の息子が休暇で来ており、二人が眠ったあとでコンピュータに向かっています。数ヶ月ごとに会う息子はどんどん成長していてびっくりです。

さて、最近筆者のプロジェクトのセネガル人スタッフで、体が大きいために日本人の間ではひそかに「大魔神」と呼んでいるンダオさんがしばらく病休を取っていました。今日久しぶりに出勤したのですが、久しぶりの彼にフランス語がうまい島調がかけた言葉が

Ça va mieux ? (サバ・ミュー?)

でした。これは「良くなったの?」というようなニュアンスです。

ここで使われている mieux は bien の比較級で、スペイン語だと、mejor にあたるものです。

でも Ça va mieux ? にあたるスペイン語の表現は、と考えると、Té va mejor ? とでも言うのでしょうか。文法的に間違っていないかもしれませんが、筆者は聞いたことがありません。Está(s) mejor ? この方がそれらしいですが、スペイン語でもっとそれらしいのは、再帰動詞の sentirse を使うことでしょうか。

あとスペイン語で mejor を使った表現で一般的なのは

Es mejor

というものです。「そっちの方がいい」という意味で、これだけで使われることもあれば、

Es mejor de hacer ~

のように、「(~を)する方が良い」といった表現もよく使われます。一方フランス語では

Il vaut mieux faire ~

のように valoir (価値がある)という単語(vaut は三人称単数形)を使って表現するようです。

この二つの例の違いは、スペイン語の mejor が形容詞として使われているのに対し、フランス語の mieux は副詞として使われている点です。どちらの言葉でも形容詞・副詞両方の意味があるのですが、慣用的な表現だと使い方が違っているのが興味深い点です。

大切なこと

前に書いたように、現在筆者の職場には、ソルボンヌ大学で勉強する通称ビンタがボランティアとして来ています。彼女も休みが終わり、週末にはパリに戻るのですが、ちゃんとフランス語を勉強している人が近くにいると便利ですねえ。「これはどういうの?」と聞いてすぐ説明してもらえるのと、自分で辞書を引くのとでは、やっぱり理解が違います。

さて今回のお題は「一番大切なことは○○です」という表現です。セネガルのお役人さんは結構形式にこだわったり、過去のやり方を変えたがらなかったりして、仕事の上でのやり取りでは苦労が絶えません。「今までこうやってきたから、これでいいんだ」みたいなことを言われると、「そうじゃないだろ?一番大切なことは…」と返したくなるのですが、スペイン語から類推して言おうとして、はた、と困ってしまいました。

「一番大切なこと」というのは、もちろん最上級を使って表現されます。最上級の一般的な形は、

定冠詞+比較級

で、これはスペイン語もフランス語も同様です。じゃあ比較級とは何ぞや?と言われてしまいそうですが、基本的には「より~である」を示す形だと

西語 más + 形容詞
仏語 plus + 形容詞

となります。ですから最上級の場合は、男性形を例に取ると

西語 el más + 形容詞
仏語 le plus + 形容詞

という形になります。主語を修飾する形で、「Aが一番大切である」と言うには

西語 A es el más importante.
仏語 A est le plus important.

になります。なお仏語の important は女性形だとスペイン語と同じスペリングの importante に変化します。

さてここまでは基本的に西語・仏語ともまったく同じと考えられるのですが、筆者が作りたかった文章は「一番大切なこと」を強調して、主語に持ってくる表現です。

スペイン語だと

Lo más importante es A.

となって、lo という中性の冠詞を使用します。これが「こと」という漠然としたものを指してくれています。さてでは、中性の冠詞がないフランス語ではなんと言うのか?というところで筆者はつまってしまいました。

ビンタが「一番似ている」と教えてくれたのは次の文です。

L’important est A.

plus がおっこちていますし、頭に付いているのは le で男性形の冠詞です。なぜこうなるかと言いますと、この場合の important は、「重要なこと」という意味の男性名詞で、形容詞ではないからです。つまり見かけはスペイン語と似ていますが、文法的にはかなり異なっている、ということです。

なおフランス語の場合Aのところには de + 動詞の原型 または que + 接続法が来ます。

またスペイン語、フランス語どちらにも英語の It is important that のような構文もあり、それぞれ次のようになります。

Es importante que + 接続法
Il est important que + 接続法

点過去線過去

現在筆者の職場には、仕事の経験がしてみたい!ということで、パリのソルボンヌ大学で文学を学ぶ日本人学生の方が一人やってきています。こちらの仕事に使う語彙や用法が普段使っているフランス語とは違うので戸惑いもあるようですが、さすがにフランス語会話はうまい!筆者がフランス語で四苦八苦している横で、セネガル人スタッフからウォロフ語を習って、ビンタという現地名までもらっています。サムラ氏も「ムッシュ・ノダより覚えが早いね!」なんて…。

Rの発音もセネガルではかなりいい加減、日本人は日本的なラ行音で通してしまうこともあるのですが、彼女にはこのラ行音がわかってもらえない…。筆者が普段使っている運転手さんはジェロームさんというのですが、彼女が言うとジェホームさんになってしまいます。現地名のサムラさんがサムハさんになってしまうのは、ちょっと違うのでは、という気もしますが。

また先の週末にはダカールの沖合いに浮かぶゴレ島という島に行って来ました。ここはかつてフランスの植民地時代に、奴隷貿易の中心となっていたところで、コロニアル風の古い建物が並び、フランス以前、ポルトガル統治時代の大砲から、第二次大戦時の要塞まで残っているヨーロッパとの関係を示す歴史の島です。かつて奴隷を送り出していた館は、現在世界遺産になっているそうです。その内にホームページで紹介したいと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、スペイン語の点過去と線過去がフランス語でどのように表現されるか、というのを取上げてみます。前回もちらっと書いたのですが、大雑把に言うとスペイン語の点過去、線過去と、フランス語の過去形の形の対応は以下のようになるようです。

スペイン語  フランス語

点過去    複合過去(口語)・単純過去(文章)
線過去    半過去

動詞の変化形から見ると、文法的には「点過去=単純過去」で「線過去=半過去」になっているようです。複合過去というのは、助動詞と組み合わせて作る形で、スペイン語の現在完了形のような形です。

点過去と線過去の違いは、簡単に書いてしまえば、点過去がある時点のみの事象を表す形であるのに対し、線過去は継続した状態を表す形である、と言えます。

例えば「私は子供だった」というのは、時間軸の一点においてだけ子供だったわけではなく、子供だった期間があるわけですから、点過去ではなく線過去を使います。以下は男性形で書いてあります。

Yo era un niño.

これがフランス語の半過去だと

J’étais un enfant.

となり、ほとんど同じものと考えてよいかと思います。

次は点過去です。「昨日パンを食べた」と言う時には、一時だけの行為ですから、線過去ではなく点過去になります。

Yo comí un pedazo de pan ayer.

これをフランス語に直訳すると、対応する単純過去を使って

Je mangeai un morceau de pain hier.

となるのですが、慣用的に口語では、複合過去を使って

J’ai mangé un morceau de pain hier.

のように言うようです。

筆者はひそかに、フランス語はあまりに複雑になりすぎたので、簡単な表現方法を採用するようになったのでは、と疑っているのですが、この表現方法なら、代表的な動詞・助動詞である avoir の現在形の活用さえ覚えておけば、あとは動詞の過去分詞形、この例だと manger の過去分詞である mangé をくっつければOKで、単純過去の活用を避けて通ることもできてしまうわけです。

ちなみにスペイン語の un pedazo de というのは「わずかばかりの」とか「ひとかけの」という意味で、「ほんのちょっと」と言う時には un pedazito などと言ったりします。

フランス語のほうの morceau は、「一切れの」「一塊の」という意味で、またよく使われるのが角砂糖(セネガルでは飲み物には必ず角砂糖です)の1個1個のことです。

フランスに長くいた人に聞いてみても、単純過去は書き言葉以外で使うことは珍しい、ということなのですが、実はフランス語の単純過去の語尾変化と、スペイン語の点過去の語尾変化は結構似ていて、スペイン語に慣れた人なら文章を読んだときに「ああ、これは点過去だな」と理解することができます。フランス語では主語を落としませんから、一層想像するのが容易です。

comer と manger を比べてみましょう。

comer   manger
comí    mangeai
comiste  mangeas
comió   mangea
comimos mangeames
comisteis mangeates
comieron mangerent

過去形

残念ながら筆者が住むセネガルのチームは負けてしまいました(2002年のワールドカップの話です)。決勝トーナメントまで残った唯一のアフリカ勢だったのですが。トルコのシュートが決まった瞬間、ダカールの町のあちらこちらから悲鳴が聞こえてきました。

今日の試合をフランス語で聞いていて「ああそう言うのか」と思ったのが、「ボールが外へ出る」という表現でした。

Le ballon est sorti.

est は etre つまりスペイン語の ser や estar に該当する be 動詞の三人称単数。そして sorti は「出る」という単語 sortir の過去分詞です。

筆者は sortir という単語を「家から出る・外出する」という意味で記憶していたので、ボールが外に出る時にもこの単語を使うのか、と思ったのでした。

さて、それはともかく、

Le ballon est sorti.

は文法的にはどうなっているのか?というところから今回の話は始まります。これをスペイン語に無理やり直訳すると、

El balón está salido.

でしょうか。

単語はフランス語と一対一で対応していますし、これなら「ボールは出ちゃっている」というニュアンスになりますから意味的にも通じます(本当にこんな言い方をするかは知りませんが)。しかし文法的には、salido は過去分詞を形容詞として用いて、está という状態を表す be 動詞をくっつけているのに対し、フランス語の sorti は形容詞ではなく、この場合の est は助動詞という扱いになっています。

このスペイン語の文は現在形でボールの状態を表していますが、フランス語のほうはテレビでは「ボールが出た」という過去形として話されていました。

こうした過去分詞を使って表現する過去形を、フランス語では「複合過去」と呼び、avoir あるいは être との組み合わせで使われます。この場合の avoir あるいは être は、助動詞となります。

avoir + 過去分詞であれば、スペイン語の haber + 過去分詞で表現する現在完了と同じのように思いますが、フランス語ではどうやら現在完了的なニュアンスと同時に、特に口語では、スペイン語の点過去、例えば「ボールが出た」

El balón slió.

のような意味でも使われるようです。いや、むしろこうした点過去の意味の方が主になっているのかもしれません。

フランス語から入った方は印象が違うのかもしれませんが、スペイン語をもとにフランス語の過去形との対照を整理すると以下のような感じになると思います。

スペイン語  フランス語

現在完了   複合過去
点過去    複合過去(口語)・単純過去(文章)
線過去    半過去

haber しか使わないスペイン語の現在完了の場合と違い、フランス語の複合過去は être を使う単語があること、さらに être を使う場合には、過去分詞を主語の性数と一致させる必要があること、などが注意点です。

筆者には最初 être を使うケースは、文法的にはスペイン語で estar + 過去分詞から派生した形容詞、と同じとしか思えなかったのですが、ニュアンス的には過去の動作を示すようで、やはり違いがあるようです。

勝ち負け

これを書いているのは2002年6月。ワールドカップもいよいよ佳境を迎えていますが、残念ながら日本はトルコに負けてしまいました。勝てる可能性もある試合だと思っていたのですが。もし日本が勝っていると、筆者が滞在するセネガルとの対戦、ということで、筆者も筆者の同僚(日本人もセネガル人も)らも、日本に勝って欲しい、と思いつつ、日本対セネガルになったら応援しにくいなあ、とひそかに思っていたのでした。

考えてみたら、フランス語圏のチームで残っているのはセネガルだけですね。アフリカでも唯一ですが。スペイン語圏のチームは、スペインとメキシコがいますが。アルゼンチンはフランス同様まさかの敗退でしたからねえ。

しかし、韓国の一戦は見事でした。試合としても充実していましたし、まさに劇的な逆転で、セネガルの人たちも画面に釘付け、延長戦はどこもかしこも仕事そっちのけ、という状況でした。

勝ち負けはフランス語とスペイン語では?

ということで、今回は勝ち負けをスペイン語とフランス語でどう言うか、をお届けします。

まずスペイン語で、勝つは ganar、英語の get あるいは gain に相当する単語ですが、フランス語も良く似ていて、gagner です。発音は鼻濁音になって「ガニェ」です。

最近のテレビでは、セネガルが勝利したあとなどには、大喜びして町に繰り出す人々の映像と共に

Le Senegal qui a gagné!

という字幕がよく出ています。

qui というのは主格を表す関係代名詞で、スペイン語では que です。直訳だと「勝ったのはセネガル」、ニュアンスとしては「セネガルが勝ったぞ!」というところでしょうか。

スペイン語に訳すと

(Es) Senegal que ganó!

でしょうか。ganó は点過去の三人称単数です。

フランス語は口語体だと、スペイン語の点過去に当たる表現を、スペイン語では現在完了形のような avoir + 過去分詞 で表現します。実際には avoir ではなくて etre を使わなくてはならない単語もあってややこしいのですが、この点はそのうち取上げたいと思っています。またフランス語にはどうやら、現在完了形という名称は存在しないようです。まあ日本語にもありませんが。

さて今度は負け。スペイン語では perder です。「失う」というような意味の単語で、有名なラテン音楽のベサメ・ムーチョには perder te つまり「君を失う」という表現が出てきます。

まあそれはともかく、フランス語ではスペイン語に非常に似ていますが、perdre となります。最後の re が逆になっています。

日本が負けた!は、

Le japon a perdú (le match)!

になります。le match はサッカーなどの試合のことで、明らかに英語からの外来語ですね。元々サッカーはイギリス発祥ですから。スペイン語では試合のことを partido と言いますから、ずいぶん違います。

ついでに書くと、引き分けのことをフランス語では match nul と言います。

¡Eso es!

これを書いているのは日本が2002年ワールドカップ予選リーグでロシアに勝った翌日ですが、職場に行くとセネガル人のスタッフが口々に「おめでとう!」と言ってきます。ちなみにおめでとうはフランス語で felicitations ! と言います。スペイン語のおめでとう、 felicidades ! 同様複数形を使うんですね。

しかしサッカーに興味がない同僚の島調は、日本戦の時間にゴルフに行っていたそうで、今日も職場に来るなり「聞いてくださいよ!私のスコア、105になったんです!」みんながサッカーの話題で盛り上がっているのに、いきなり自分のゴルフのスコアの話題を持ち出すところがなんともすごいというか…。

それはともかく、ここセネガルでは日本と9時間時差があるので、サッカーの放送は朝6時半から始まり、その日の試合が終わるのがお昼過ぎです。この間はみんなそわそわして、あまり仕事になりません。もちろん会議も午前中は避けているようで、今日も午後に会議が一つ入りました。

議長は例によってサムラ氏です。フランス語で議論していてよく聞く言葉の一つに C’est ça ! (セ・サ)というものがあります。これはスペイン語だと、¡ Eso es ! 相手の言った言葉に同意をしたり、賛意を示すときに使う相槌のようなものです。

そしてよく似た表現で,以前から気になっていたものに「トゥタフェ」というものがありました。どうも軽い相槌は「セ・サ」で、特に賛意を示すときには「トゥタフェ」と言っているようです。

まあそれはわかっていたのですが、問題はこのスペル。多分こうだろう、と考えていたのは

Tout a fait

でした。

「あってるじゃないか」と思われた方もおいででしょうが、筆者が想像していたのはアクサンのない a つまり、avoir の三人称単数形の a でした。そして fait は faire (する・作る)という動詞の過去分詞形。要するに、これを C’est ça みたいな一つの完結した文なのかと思っていたのでした。フランス語は avoir 動詞と過去分詞形を組み合わせて一種の過去形を作ります。

それを今日、サッカーの話はだめでもフランス語はうまい島調に確認してみました。そうしたらいきなり笑われてしまいました。なんと a は上にアクサンが付く前置詞の à で、fait は名詞の fait 、つまり「事実」とか、そういうような意味の単語だったのです。

筆者はてっきり「全部がやった」というような意味の文が、ニュアンスとして「そのとおり!」みたいなことを意味しているのかと思っていましたが、そうではなく、 tout à fait で「まったく」を意味する副詞句なのでした。

さて tout に該当する todo を使ったスペイン語の表現は…と考えてみましたが思いつきません。それもそのはず、この場合の tout は副詞なのですが、スペイン語の todo には副詞としての用法はないようなのです。

仏西辞典で tout à fait をひいてみると、completamente と出ていました。

nombreの意味

2002年、皆さんご存知のように?!、ワールドカップ・サッカー第一戦は、大方の予想を覆して初出場セネガルが、優勝候補のフランスを破りました。筆者は現在セネガル在住ですから、この国の喜びようと言ったら、多分フランスから独立したとき以上ではないかと思います。

試合終了直後から首都ダカールの町は凄い騒ぎでした。人々は国旗を持って町に飛び出し、車やバイクはクラクションを鳴らしっぱなし。白バイはサイレンを鳴らして走っていますが、取締りではなく、ポリスもバイクの上で両手を挙げてガッツポーズをしています。モスクから聞こえるお祈りを呼びかける声も今日ばかりはかき消されそうです。ひょっとするとあの声も今日はアラーに勝利を感謝しているのでしょうか。

さて今回の記事は単純な名詞 nombre を取上げます。どんな意味でしょうか?

スペイン語を知っている方にはnombre の意味は「名前」なのですが、フランス語を知っている方には「かず(数)」になってしまう、つまり同じスペルでまったく意味が違う単語です。

こうした単語、覚えてしまえばそれまでなのですが、なまじどちらかの言語を良く知っていたりすると、頭の切り替えがうまく行かずに???になってしまうことがあります。

筆者は仕事でスペイン語を使っていましたし、現在も職場で使うことが圧倒的です。今週などは朝から晩までフランス語の会議に数日間出ていましたから、随分とフランス語に耳が慣らされた気がします。

でもその中で、理解しようとしているときにつっかえてしまうのが、こうした単語でした。例えば

le nombre de gens

などと出てくると、筆者はついつい「人々の名前」かとうっかり思ってしまうのですが、もちろん「人々の数」つまり人数のことになります。フランス語では名前は nom です。

つまりフランス語の nombreの意味は英語の number に該当し、スペイン語では número のことかと思いきや、そうは問屋が卸さないから困ります。

スペイン語の número に該当する単語としてはフランス語には numéro があります。しかしフランス語の numéro は「かず」ではなくて「番号」のようなものを意味します。

例えばスペイン語で

número de gente

と書けば、「人々の数」の意味に普通はとられますが、フランス語で

le numéro de gens

と書くと、「人々の番号」というちょっと意味がわからない言葉になってしまいます。つまり英語(number)やスペイン語(número)ではあまり区別されていない「かず」「番号」が、フランス語ではそれぞれの単語で区別されている、ということですね。

ひょっとすると le numéro de gens の gens にはフランス語にお決まりの冠詞は付かないのか?という鋭い突込みをされる方がおみえかもしれません。申し訳ありませんが「意味によって変わるし、正確にはわからない」とお答えします。

tener のフランス語は

フランス語で「持つ」

今回のお題はスペイン語の tener です。そう「持つ」という意味の tener です。

さて結論から先に言ってしまうと、フランス語には「持つ」という意味でtener に該当する単語 tenir があるのですが、所有の意味の「持つ」は普通 avoir を使って表現するようです。

「私は車を持っています」は以下のようになります。

J’ai une voiture.

一方 tenir を使って

Je tiens une voiture.

としてしまうと、「車を手に持っている」ようなおかしなニュアンスになってしまうようです。「保持する」という意味もあるので、コンテクストによってはこれでも意味が通じることもあるのでしょうけれど。

avoir はまだ取上げていませんが、多分皆さんご承知のように、英語の have に該当する単語です。英語で have が「持つ」という意味の動詞でも、助動詞でも使われるのと同じように、avoir の用法も「持つ」という動詞と、過去形の1種(英語やスペイン語では現在完了形に相当)を作るのに使われます。

この単語、相当いやらしく不規則で、以下のように変化します。

j’ai (ジェ)
tu as (テュア)
il a (イラ)
nous avons (ヌザヴォン)
vous avez (ヴザヴェ)
ils ont (イルゾン)

難しいかと思いますが、非常に良く使い、また耳にしますから、使っていると割とすぐに覚えます。お店などに行って「○○はありますか?」と聞くときにも

Vous avez ~?

と聞くことが多いです。このあたりはスペイン語で

tiene ~?

ときくのとまったく同じ感覚ですね。

筆者にとって最初厄介だったのは ils ont でしょうか。être の三人称複数は

ils sont

なのですが、こちらは ils のsと sont のsが発音上続くので、音が濁らず(イルソン)というような発音になります。この二つを最初よく間違えました。

ついでにこの親戚で、よく使う単語の活用をあげておくと

ils vont (aller) 行く
ils font (faire) する

があります。単語ごとに六つの活用形を練習することが多いようですが、筆者には

ils ont
ils sont
ils vont
ils font

などのように、主語を同じにして別の単語を並べる方がリズムとして頭に入ってよいような気がします。

挽肉

さて前回に続いて挽肉からのお題です。

挽肉機(日本語ならミンサーかな)がどこで売っているのかを秘書のマゲットさんに聞いてみました。彼女は副業で商売などもしているそうですし、きっと知っているだろうと思ったからです。

スペイン語では肉を挽くのは moler あるいは picar という単語を使います。一般的には carne molida で挽肉という意味になりますし、料理の名前の中では picada という表現を見かけることも良くあります。

そこで「挽く」というフランス語なら、と思いついたのが moudre という単語。挽き機ならば moulin になるのかなあ、と思いましたが、moulin というと、パリのかのムーラン・ルージュにも使われている単語で、風車小屋とか、製粉所・製粉機といった意味があります。これではちょっと大きすぎると思ったので

la machine pour moudre de la viande

と言ってみました。

そうしたらマゲットさんには最初にきょとんとされ、そして「肉は moudre じゃなくて hacher よ。」と訂正されてしまいました。横で聞いていた島調からはさらに「hacher の頭には H が付きますからね。」と駄目押しをされてしまいました。

hacher はスペイン語の hacha (斧)に似ているのでもわかるかと思いますが、刻む、というニュアンスの単語です。フランス語では挽肉は刻み肉だったんですねえ。昔は斧のような刃物で細かく刻んだ名残でしょうか。スペイン語の picar もどちらかというと刻むというニュアンスですね。

またフランス語の斧は hache で、挽肉のことは viande hachée あるいは一語だと hachis という表現もあります。viande hachée は女性名詞なのに、hachis は男性名詞なのがトリッキーですね。

さてでは肉挽き機はなんと言うのか。フランス語では hachoir のようです。斧から挽肉ができて、今度は挽肉を作る機械に別の名前が付いているのが面白いですね。

ではスペイン語では?一番簡単には

maquina de moler

で、スペイン語にはありがちな説明的な表現ですね。あるいは moledora とか picadora という言い方もあるようです。

ところがさらにマゲットさんに肉挽き機のことをなんと言うか聞いてみると「ムリネックスよ」という返事。moulinette なら野菜をおろす機械という意味で辞書にもありますが、ムリネックスはありません。さてこれは商標なのでしょうか。

で結局肉挽き機はどうしたかって?ダカールのマーケットを探して中国製を見つけました。いやにごつい代物ですが。

どこで売ってる

1週間の休暇を終えてニューヨークからセネガルに戻ってきました。妻や息子ともまたまたしばらくのお別れです。何ヶ月も会ってないのにまだ10ヶ月にならない息子は筆者のことを覚えていました。凄いですねえ、子どもの能力というのは。これからどんどん言葉を覚え始めることでしょう。そうなったら子どもの学ぶスピードに筆者がかなうすべはありません。

さてニューヨークで買おうと思って探したけど見つからなかったものがあります。それは「肉挽き機」です。ぐりぐり手で回すと挽肉ができる装置です。大手のデパートなども行ったのですが置いてありません。日本ならば東急ハンズへ行けばまず間違いなくあるのでしょうけど。

なぜ肉挽きが欲しいのかというと、セネガルでは挽肉が一般的でなく、種類も限られていることに加え、息子が遊びに来たときでも、まだ奥歯のない息子でも食べられるものを準備するのに便利だと思ったからです。セネガルは肉以外にも海産物、イカとかタコとかもたくさん取れますから、そうしたものも挽けばおいしく食べられるだろう、という作戦です。

「肉挽きはどこで売ってるのかなあ」で思いついたのが、「どこで売っている?」という表現です。スペイン語では一般的に

¿Dónde se vende?

のように「どこで売っているか」と表現するのが一般的のようです。

一方フランス語でなんと言うかフランス語がうまい同僚の島調に確かめたところ

Où on peut acheter?

が普通だとのことでした。こちらは「どこで買えるか?」という表現になっているわけですね。

もちろんスペイン語でも

¿Dónde se puede comprar?

とか

¿Dónde podemos conseguir?

とか、「どこで買うか」という表現もできますが、筆者はあまり耳にしたことがありません。

今回の表現の中で注意するのは、「売る」「買う」という表現よりも、スペイン語の中の se とフランス語の中の on でしょうか。

これらは共に活用は3人称をとりますが、意味的には無人称で使われ、共通点もあります。スペイン語で「どう言いますか?」は

¿Cómo se dice?

すが、フランス語では

Comment dit-on?

と非常に良く似た表現をとります。dit は「言う」という動詞 dire の3人称単数形ですが、この単語もスペイン語の decir に似ていますね。

ただ se と on の違いとしては、どうやらこの場合の on には「わたしたち」というニュアンスが含まれていることです。辞書にはまったく無人称で主語を特定しない単なる「人は」というような表現での on もあるのですが、実際に使われている表現を聞いていると、on はかなり主語を明確にしているような印象を受けます。

一方スペイン語の se は純粋に無人称で「わたしたち」を示すのに使われることはありません。また se は意味としては「売られている」「言われている」というような受動態的なニュアンスを示すことが多いですから、そのまま入れ替えて使えることが多いと言えども、on とは随分異なっているように思います。

~年前

筆者は現在家族に会うためにニューヨークに休暇で来ております。

昨日ガイアナの航空会社 Universal Airlines という多分誰も聞いたことがない航空会社の、ダカール-ニューヨーク直行便に乗りました。定刻どおりの出発でしたが、どうも画面に表示される飛行機の向きが真西を向いています。ニューヨークなら北西のはず。

悪い予感は的中して、やがてアナウンス。「ようこそガイアナへ。当機がガイアナ経由になったことを事前にお知らせしなかったことをお詫びいたします」。と言うわけでアフリカから南米経由でニューヨークに到達しました。初めて大西洋を渡りました。

筆者の息子は、毎日メキシコ人がやっている託児所に行っています。今日は妻と共にそこまで息子を送りに行ってきました。そこでは

「あら、久しぶりねえ。息子さん大きくなったでしょ?」

なんていうやり取りが当然かわされたわけですが、ついつい「ウイ」とか「メルシー」という言葉が先に出てしまいます。スペイン語で話しかけられてフランス語で答えている日本人の姿は、もし誰かがはたから見たらわけがわからないでしょうね。

さて「久しぶり」というような表現を今回は取り上げて見ます。

スペイン語では○○年前というような表現に英語なら do あるいは make にあたる動詞

hacer

を使い、例えば5年前なら

hace cinco años

というように表現します。

フランス語にも良く似た表現方法があるのですが、こちらは「~がある」という表現を使い

il y a cinq ans

と表現します。

そして

hace mucho tiempo!

つまり「ずいぶん前に」という表現は

il y a longtemps! (イリヤ・ロンタン)

となりますが、「久しぶりだねえ!」というニュアンスだとこのほかにも

ça fait longtemps! (サ・フェ・ロンタン)

という言い方も用いるようです。こちらは do に近い faire を使っていますから、意味的にはスペイン語の hacer と同じような表現方法もあるわけです。ただ同僚の島調の表現を聞いていると「久しぶりだねえ!」という意味では、
il y a ~ よりも ça fait ~ を多用しているようです。

これのフルセンテンスは

ça fait longtemps que je ne vous ai pas vu.

となります。vous は「あなたに」を示す目的格の代名詞で ai は avoir の第一人称単数、vu は会う、voir、スペイン語だと ver にあたる単語の過去分詞です。スペイン語に直訳すると

hace mucho tiempo que yo no le he visto (a usted)

となります。スペイン語でこんな言い方をしているのを耳にした記憶はありませんが、意味はわかるかと思います。

longtemps は想像がつくと思いますが、英語の long time の意味です。「長い」は long で、英語と共通です。発音は「ロン」ですが、女性形になると longue となり、英語の「ロング」とほとんど同じような発音になります。

一方「短い」は court ですから、スペイン語の corto に似ていますね。

寒い!

アフリカの地図をご覧になるとわかりますが、セネガルはサハラ砂漠の南、赤道よりは北ですが、フィリピンと同じくらいの緯度にあります。標高も低い国ですから当然気候は熱帯です。特に内陸の乾燥した地方に行くと、日中の気温が40度を超えるのはざら、時には50度にもなります。

筆者の同僚コーミは、すっかりこうした気候になじんでしまっています。ところが今年のダカールはちょっと異常で、いつもなら暑くなる5月に入っても、非常に快適な気温が続いています。海辺の町ですから、内陸部ほど暑くはならないのですが、半袖では肌寒い日も多くあるくらいです。それでコーミは「寒い!寒い!」と言いながら長袖を着込み、その上からショールなどを肩にかけています。

筆者は昨年の12月に冬のニューヨークから日本を経由して赴任してきたので、それほど寒いとは思いませんが。

さてスペイン語では「寒い」は

Hace frio.

です。hace は hacer の三人称単数形ですが、この場合は無人称と考えた方が良いかもしれません。表面には出てきませんが英語の

It’s cold.

の it と同じで曖昧な主語です。

 幸いなことにフランス語も良く似ていて、スペイン語の hacer に対応する faire を使って表現します。

Il fait froid.

 froid (寒い)もスペイン語の frio に似ていますから楽ですね。

一方 il は英語の it とはちょっと違っています。英語の it に該当するフランス語は「それ」という意味でなら多分 ça (サ)だと思うのですが、無人称の主語を表すには彼という意味がある il をよく使います。il を用いる表現は多くあるので、おいおい紹介していきたいと思います。

さてでは「寒い」に似た表現を紹介しましょう。

良い日ですね。
Il fait beau.
Hace buen tiempo.

ちょっと涼しいですね。
Il fait un peu frais.
Hace un poco fresco.

とても暑いですね。
Il fait très chaud.
Hace mucho calor.

これ書いてあらためて気がついたんですが、chaud は形容詞なのに、calor は名詞なんですね。

いるかい?

筆者の部屋には筆者を含めて4人が座っています。3人いる日本人の中で一番フランス語が得意、かつフランスきちがい?の同僚、島調は秘書のマゲットの隣に座っています。職場の他のスタッフがオフィスにいるかどうかをマゲットに尋ねるとき、「○○さんはいますか?」という意味で島調は

Il est là? (男性の場合)

と言っています。est は être の三人称単数で「いる」で問題ないと思いますが、この後 là が今回のポイントです。

là を辞書を調べると英語の there つまりスペイン語の allí, allá にあたる「そっち」「あっち」が第一義のようなのですが、どうもニュアンス的には ici という「ここ」つまり aqui と同じようにも使われているようで、混乱してしまいます。

また時間的な「その時」という意味もあり、きっとニュアンスとして身につけるしかない単語なんでしょうね。そうしたものがフランス語にはかなりあるように思えます。

それはともかく、スペイン語だとこの場合、

¿(El) está allí?

とでもなるわけですが、実際には日本語で「○○さんいる?」という感じで、「どこ」という意味をあえて言わなくても là が慣用的に入るようです。だから ¿Sr. Ito está? というのも M. Ito, il est là? となります。

フランス語だと発音は「イ・レ・ラ?」と3音節だけになってしまいますし、語呂もよくてこれは簡単。女性の場合を聞くなら

Elle est là?

で「エ・レ・ラ?」です。複数は etre の3人称複数形を使って

Ils sont là?
Elles sont là?

になるはずです。

ちょっと注意が必要なのは、例えば「ムッシュ・オリタはいますか?」と聞くならスペイン語では

¿Sr. Horita está alli?

ですが、フランス語だと

M. Horita, il est là? (M. はムッシュの省略形)

と表現する点です。どこが違うでしょうか?

スペイン語だと Sr. Horita が既に está の主語になっていて el を重ねませんが、フランス語だと、名前を言ったあとに代名詞を重ねるのが一般的なようなのです。どうしてでしょうか?

Poco a pocoの意味

ポコ・ア・ポコ(poco a poco)の意味は?

スペイン語でよく使う表現の一つが ポコ・ア・ポコ(poco a poco) だと思います。poco a pocoの意味はご存知かと思いますが、「少しずつ」「一歩ずつ」「ゆっくりゆっくり」のようなニュアンスです。音楽用語としてのpoco a pocoは、イタリア語起源だと思います。ま、イタリア語でもスペイン語でもポコ・ア・ポコは発音も意味も同じだということですね。言葉の面白い響きから、ポコ・ア・ポコという言葉が日本でお店の名前に使われているのも時々見かけます。

フランス語でポコ・ア・ポコにあたるのは?

さて筆者の職場にときおり顔を出すフランス人のお兄ちゃん(いや、もうおじちゃんか?)がいます。彼は筆者に向かって必ず「フランス語はどうですか?」と聞くのですが、筆者の答えは常に

petit á petit (プティ・タ・プティ)

つまりスペイン語の

poco a poco

に該当する言葉です。

pe の e にはアクサンがないので発音は「プ」になり、単独では無声の t は後に á が来るので「タ」と発音されます。

言葉の響きも似ているので、同じ表現だと思っていたのですが、ある日ふと気が付きました。

スペイン語の poco は

un poco
un poco de
poco
poco de

などという表現があり、「少し」「少しの」「ほとんどない」などの意味になります。つまり英語の few と little とを兼ね備えた単語です。

これに該当するフランス語の単語は peu で、やはり

un peu
un peu de
peu
peu de

などとして使われ、意味的にも poco とほとんど変わりません。

一方 petit a petit に使われている petit の方は、元々は「小さい」という意味で、言わばスペイン語の pequeno (ペケーニョ)により近い単語です。

フランス語の petit は日本で「プチなんとか」と言うときに使われるのでなじみがあるかと思います。

そう、似ていましたがフランス語とスペイン語では表現の仕方が違っていたんですねえ。

でも万が一、と思って調べてみたら

peu á peu

という表現で「少しずつ」を表すのもフランス語にはありました。ただ今のところ一度も見かけたことはありませんが。

さらに面白い表現として petit と peu を重ねた

un petit peu

という言い方がありました。これは「ちょっとだけよ」というときに使う

un poquito

の意味のようです。

えがるマン?

ある日の会議の中、例によってしゃべりまくるサムラ氏の発言の中でいくつか耳に付いたフランス語の単語があるのですが、その一つが「えがるまん」でした。どうも重要な単語であることはわかるのですが、何のことやらわかりません。フランス語のスペルがわかりませんから、その時は手帳にカタカナで「エガルマン」とメモをしておきました。

さて会議が終わり、自分のデスクに戻ってから「さてえがるマンとは何者?」と早速フランス語辞書で引いてみました。

まず

egarement

で引いていました。そしたらありました。

意味は「錯乱, 逆上」あるいは「道に迷うこと」と出ていて、しかも「文語」「古語」となっています。仕事がそんなにおかしなほうに行っているとも思えませんので、どうやらこれは違います。

と、そこにフランスで5年間暮らしていたことのある筆者の同僚、島調が入ってきました。フランス語はぺらぺらです。さっそく「えがるまんはどうつづるの?」と聞いてみると、

「egalement です。意味は『同じく』ということです。」

とのこと。いつまでたってもrとlの区別は難しいです。

ここ10数年は昨年3ヶ月行ったボリビアを除くと英語で仕事をする機会が圧倒的に多かった筆者は、「なんだ、equally か」とまず最初に思ったのですが、ふと気がつけば、ほとんどスペイン語の「イグアルメンテ」 igualmente じゃないですか! Voila!

なんだかフランス語は鼻音の「アン」とか「モン」という発音が多いので、ちょっとユーモラスに聞こえるし、筆者にはまだぴんと来ないことが多いのですが、スペルを思い浮かべて考えると、該当するスペイン語が類推できることが良くあります。

例えばフランス語の「じゃんじゃんぶる」。セネガルにはジャンジャンブルのジュースというものがあるのです。これも聞いたときには何のことかと思いましたが、つづってみると、

gingembre

無理にスペイン語読みすると「ひんへんぶれ」そうスペイン語だと

jengibre

「へんひぶれ」でショウガのことでした。これを無理にフランス語読みすると「じゃんじぶる」でしょうか。やっぱりかなり似てますね。

ちなみにジャンジャンブルのジュースというのはショウガの汁を絞って水で薄め、砂糖を加えたものです。

ジャパンスクはロシア語?

セネガルに着任して間もないある日フランス語で行われる仕事の会議に出ていました。何が議題になっているのかはわかるのですが、詳細に関してはフランス語が達者な同僚に通訳してもらわないと、情けないですが把握できません。その時の議長サムラ氏は、こちらの多くのお偉方と同様に結構自分でしゃべってしまう人だったのですが、「ジャパンスク」「ジャパンスク」と繰り返し言っているのが聞き取れました。

スペイン語なら日本は「ハポン」ですが、フランス語では「ジャポン」。日本人がいるから日本のことを言っているのか?それにしても「ジャパンスク」なんて単語は聞いたことがないし、なんだかロシア語みたいだなあ…、いやロシア語ではヤパンスクだったか…などと思っていてふと気がつきました。

「これは『Yo pienso que』(ジョ・ピエンソ・ケ)だ!」(スペイン語で「わたしは~と考える」の意味)

そう、フランス語では

Je pense que (ジュ パンス ク)

というのでした。スペイン語の pensar (考える)はフランス語では penser と非常によく似ています。que は英語の that にあたり、複文を作るときに使います。こういうよく似た表現があると、とっても得した気分になります。

ついでにもう一つ似た表現、スペイン語の

(Yo) creo que

(わたしは~と思う)はフランス語だと

Je crois que

になります。これもスペイン語とフランス語と似ていますね。フランス語とスペイン語の que はカバーする範囲が違って戸惑うことも多いのですが、この場合は共通の意味で使われています。

これらの表現は英語では I think that にあたり、que 以下に自分が思う内容が従属節としてくっつきます。

一般的に肯定文のとき(思っている内容に自信・確信があるとき)は従属節の中の動詞は直説法になり、否定文や疑問文のとき(思っている内容に確信がない・疑問があるとき)には従属節の中の動詞は接続法になりますが、これもフランス語・スペイン語で共通しているようです。接続法なんて当分書く予定はないのですが、使われるニュアンスは似ている、ということのようです。

20数年前にスペイン語の会議に初めて出たときにはほとんどちんぷんかんぷん。話によっては何が議題であるのかすらわかりませんでした。それ以前に3ヶ月ものスペイン語の集中訓練を受けていたのに、です。

ところが今回のフランス語の場合は、最初からわかるときにはわかりました。なぜかと言うと、単語がスペイン語や英語とよく似たものがかなりあるからです。ところが、文法をきちんとやった20年前は、仕事で使う言葉を覚えればどんどん理解ができるようになっていったのに対し、きちんと身につける前に仕事をし始めてしまった今回は、4ヶ月たっても相変わらず「ある程度わかる」くらいから、なかなか進歩しません。

やっぱり文法や、慣用的な表現はある程度集中的に丸暗記しないとだめですね。それと徹底した会話練習。それがないと頭がなかなか「フランス語化」しませんから。

Yo también!

もう一つ時折耳にする moi の表現で、よく使うものを取り上げます。

「私も」と相槌を打つようなとき、スペイン語では一般的に「~もまた」を意味する tambien を使い、

Yo también.

と言います。también にあたるフランス語は aussi です。そしてこれと同じような表現をフランス語では

Je aussi.

とは言わずに

Moi aussi.

と moi を使って言うようです。英語でもよく耳にするのは

I too.

ではなく

Me too.

ですから、これから考えると、この場合の moi は主格代名詞ではないのかもしれませんね。筆者には良くわかりませんが、しゃべる分には moi と覚えておけばいいですから。

では、否定形で「私も」という意味の

Yo tampoco.

にあたるフランス語は?と思われることと思います。実は筆者はまだ耳にしたことがないのですが、調べてみたらこれは

Moi non plus.

という表現を使うようです。plus はスペイン語の mas (英語の more)にあたりますから、「私もそれ以上ではない」というようなニュアンスから来ているのでしょうか。

トワエモアの意味

トワ・エ・モアはフランス語で toi et moi 、「君と僕」あるいは「あなたと私」という意味ですが(日本語は主格代名詞の性に気を使わなくてはいけない面倒な言葉!)、フランス語だろうとは思っていたものの、筆者がその意味を知ったのは、恥ずかしながらごく最近のことでした。

昔、日本でトワ・エ・モアというグループが良くテレビに出演してデュエットで歌を歌っていました。どれくらい昔かというと、札幌オリンピックの主題歌「虹と雪のバラード」を歌いましたから、筆者の記憶にかろうじて引っかかっているころ。結構昔、フォークソングがはやっていた1970年代のはじめでしょうね。

スペイン語では日本語と同じように主格代名詞、「私」とか「あなた」とか「君」とか「彼」というのはよく省略されます。その代わり、

hablo hablas habla

スペイン語で「話す」という意味 hablar の現在形単数の変化)とかいったように、動詞の語尾が人称と単数複数で異なっており、主語が省略されても動詞で主語がわかる仕組みになっています。

一方フランス語は、やはり結構異なっていて、同じ「話す」の parler は

parle parles parle

と変化します。ところがフランス語では、これに三人称複数の parlent を加えて、発音は「パルル」というように、同じになってしまいます。そのためか、フランス語では、命令文など以外では、原則として主語を必ず書く、というルールになっています。まあこの点は英語でも同じかもしれませんが。

スペイン語で、話しているときに Yo…, Yo…, Yo… (「私」の意味)なんて繰り返すのは、egocentrico (自己中心的)と思われてしまいかねませんが、フランス語では je を省略せずにJe…, Je…, Je… と言わなくてはならないようです。そしてスペイン語では、特に「私が!」と強調したいようなときには Yo をつけて強めに発音するのですが、フランス語は最初から Je が付いているので、あえて「私が」と強調したいときには Moi と言うようです。そして「君が」というときには Toi と言います。

Moi, je ….

といった感じで、主語を重ねて使うようです。

その他にも toi とか moi には目的格の代名詞の意味もあるようですが(例えば英語の excuse me は excusez-moi です)、目的格の代名詞は結構似て非なるところがあって頭痛の種ですのでまた今度。

Yの悲劇

エラリー・クイーンの「Yの悲劇」を検索されてこられた方はこちらへどうぞ

フランス語では英語の there is, there are に当たる表現は

Il y a

というものを使います。il は三人称単数の代名詞、 a は avoir というスペイン語の haber にあたる動詞の三人称単数形、直訳すれば「それは~を有している」というようなニュアンスでしょうか。では間にある y は何なのか?スペイン語で and を表す y はフランス語では et ですから別物です。

フランス語にはこの他にも、Allez-y (やりなさい)とか、かなり慣用的な表現の中に y が出てきます。辞書を引くと「そこに」「それを」「そのことを」などという意味があるそうです。また「私は駅に着いた」「そこに彼女が待っていた」などというときの、「そこに」を表現するにも y が使われるようです。

さて最初の Il y a に戻ってこれに該当するスペイン語の表現は

hay

一言です。主語はありませんが、haber の三人称単数形の変形だと言われています。そして、そうここにも y が…。haver が avoir に対応し、またスペイン語では主語がよく省略されることを考えると、y も含めてほとんど同じ表現であることがわかります。事実ものの本(「フランス語からスペイン語へ」)によれば、スペイン語の hay に含まれる y は、フランス語の y と語源が同じであるそうです。

さてそうなると、スペイン語では hay だけを残して、他のケースで使う y はどこへ消えてしまったのでしょうか?ひょっとすると hoy (今日)の y もそうなのかな?

Vosotros なんて使いますか?

さてスペイン語を使ったことがある方、現在使われている方に質問です。二人称複数の主格代名詞、「きみたちは」を表す vosotros という単語、あるいはその動詞の活用を使われることはありますか?

ラテンアメリカではあまり使われず、スペインでは使われる、と読んだことがありますが、筆者はスペインには1週間行っただけです。その他は通算すると2年8ヶ月とちょっと中南米で仕事をしていたせいか、この活用形を使った記憶はほとんどありません。常に

ustedes

(意味的には「あなたたち」で2人称だけど活用は3人称)を使っていました。また、読者の中にはあまり親しい人がいなくて(失礼)、2人称単数の tú も使われない方もおいでになるかもしれません。

ちなみにこの tú はフランス語でもまったく同じで(フランス語のスペルはアクセントが付かずに tu ですが)、親しい、気安い間柄でのみ使われる表現です。そしてスペイン語で「tú を使って話す」という意味の動詞で

tutear

というものがありますが、フランス語にも

tutoyer

という言葉があるようです。

さて、tu は共通するのでよしとして、問題は二人称の複数、スペイン語なら

vosotros

フランス語なら

vous

です。これも見かけは似ていますから同じ意味かと思いきや…。

スペイン語は親しい間柄の二人称で使われるのに対して、フランス語ではスペイン語の usted と ustedes 両方とそしてもちろん vosotros の意味を vous は持っています。

歴史的に見てどうしてこうなったのかは知りませんが、まあそうなっているものは仕方がありません。「どうせ使わないんだから」とたかをくくってきちんと覚えなかった二人称複数の活用も、フランス語ではしっかりとやらなくてはなりません・・・。

ちなみに筆者がいた中米の国ホンジュラスでは、tú よりももっと砕けた表現で「お前」みたいな感じで

vos

という言葉を使っていました。これならフランス語の vous にも似ていますね。オックスフォードの英西辞典を引くと、vos は中央アメリカの表現としてちゃんと載っていました。こうした表現は国や地方によってそれぞれ異なったものがあるようです。

アクサンはアセントではない

フランス語のアクセント

日本語で言うアクセント、まあ英語の accent はフランス語ではそのままのつづりで読み方はアクサン、スペイン語では acento と書いてアセントです。どちらにも日本語と同じ、強勢、つまり音の強い、あるいは上がる部分という意味も、「なまり」という意味もあって、意味としては同じです。

一方実際の単語の(強勢としての)アクセントの場所は、スペイン語ではアセント記号が母音についていればその音節に、なければ後ろから二つ目の音節、あるいは語尾の子音によっては最後の音節にあります。これは非常に規則的で、例外はありません。

一方フランス語はアクセントがはっきりしない言語だそうですが、しいて言えば語の終わりにあるのだとか。

筆者の同僚の島調はスペイン大使館員をたぶらかして?!ただでスペイン語を教えてもらっているのですが、フランス語がうまい彼女のスペイン語は、抑揚がなくてとてもフラットになってしまい、筆者などの感覚からすると生気が感じられなくなってしまいます。

フランス語のアクサン記号

さてではフランス語には3種類もあるアクサン記号

accent aigu アクサン・テギュ(á)
accent grave アクサン・グラーヴ(à)
accent circonflexe アクサン・シルコンフレックス(â)

に強勢の意味があるのか、あればこの三つはどのように区別されるのかと思っていたら、発音が多少変わるものの、強勢の意味ではないのだそうです。

特にいやらしい?のが e で、フランス語では「ウ」に近い発音で(筆者はいまだによくエと読んで先生に叱られます)、一方 è é ê はどれもエと発音されますが、ちょっと発音の長さが違う程度で、筆者にはほとんど区別ができず、無論音を聞いただけでは(筆者には)書き取りもできません。

例えば君臨・統治を意味する règne とその動詞の régner (スペイン語の reinar)ではアクサンの向きが逆になったりして、一層フランス語をとっつきにくいものにしてくれていると、筆者は個人的に考えています。

Bonjour!

セネガルでは挨拶がとても大切です。朝職場に行くと、誰もが次々にオフィスをまわって挨拶を交わします。Bonjour! Ça va? というフランス語の挨拶のほかに、サムラ氏などからはいきなり「ナガデフ?」とウォロフ語で言われることもあるので面食らってしまいます。ちなみにこれは How are you? なのですが、返す言葉は「マンギフィレック」で、意味は「私はここだけにいます」だそうです。つまり、「元気だからここにいる」ということのようです。

ウォロフ語はともかくフランス語の Bonjour です。一語で表現されていますが、構造的には「良い日」で、スペイン語の挨拶 Buenos días と同じです。でもちょっと意外だったのは、Buenos días と違い、午後になっても使うことです。夕方近くなると Bonsoir に変わりますが、それまではずっと Bonjour。

bon は「良い」という意味で、スペイン語の buen に該当します。フランス語の形容詞も修飾する名詞の性と数によって変化するのはスペイン語とまったく同じです。ただスペイン語だと女性形の語尾が a に変わるところが、フランス語は一般的に e に変わります。bon の場合は、発音を整えるためなのか女性形だと n を重ねて bonne になります。

それにしても以前から不思議なのはスペイン語のほう、Buenos días です。何で複数なんでしょうか。いつもはフランス語を聞いて「何でだ!」と思うことが多いのですが、こればかりはスペイン語の表現の方が不思議です。でも去年ボリビアに行ったときにはみんな「Buen día」と単数で挨拶していました。これはこれでまた不思議。お隣の大国ブラジルで話されているポルトガル語は Bon dia(ボン・ジア)と単数なのでその影響でしょうか?

あとフランス語にあってスペイン語にはないと思われる表現に journée (ジョルネー)というものがあります。jour が単なる数えられる日であるのに対し、journée というのはその日の時間的な経過を含む、とでも言うのでしょうか。Bonne journée! という挨拶もあって、これだと「良い一日を」という意味になります。スペイン語だと Pase buen día! でしょうか。ですから出会ったときでなく、分かれるときの挨拶になります。

この née という表現、jour だけでなく、例えば年(an)などにもくっついて、Bonne année! は「新年おめでとう」あるいは「良いお年を」という意味になります。

être は estar か ser か?

フランス語では英語で言うところの be 動詞は être です。日本語では「○○です」の「です」にあたる部分ですね。être には実際にはもっと深い意味もあって、名詞として「存在」なんていう意味もあれば、raison d’être と言えば「存在理由」「生きがい」なんていう意味になり、この表現はちょっと難しい英語などの文中でも時折見かけるものです。英語の中にはイタリックで書いて使うフランス語がちょこちょこありますからねえ。

まあそれはともかく、スペイン語の be 動詞は estar と ser との二つがあり、 être は文字面だけ見れば estar に該当すると思いきや、変化は je suis から始まり、スペイン語の ser の活用にまあとりあえずはそっくりです。

je suis
tu es
il est
nous sommes
vous êtes
ils sont
yo soy
tu eres
el es
nosotros somos
vosotros sois
ellos son
フランス語とスペイン語のBe動詞


さらにフランス語の単純過去とそれに該当するスペイン語の点過去は一人称単数の変化がそれぞれ je fus と yo fui ですし、未来形も je serai と yo serè ですから、まあ本当によく似ている、というかほとんど同一のもののようです。

表現法としても、英語の can be, may be はスペイン語なら puede ser、 そしてフランス語だと peut être (発音はプテートル)ですから、やはり etre は ser に対応しているようです。

しかし、スペイン語では非常に重要な言葉である estar はフランス語ではどこへ消えてしまったのでしょう?ester という単語はありますが、estar とはちょっと違うようですし。 il est と vous êtes の二つは t が入りますから、見方によっては estar の変化、er està と vosotros estàis に近いような気もします。ひょっとすると二つがくっついたものが être なのでしょうか。

フランス語のありがとう

フランス語であれスペイン語であれ、はたまたスワヒリ語であれ、実際に使うことを考える場合に一番先に学ぶべき言葉はやはり挨拶。「こんにちは」「さようなら」「ありがとう」「どういたしまして」が最重要。そこで今回はまずフランス語とスペイン語のありがとうを取り上げます。

フランス語で名詞を使った「ありがとう」

まず英語のありがとうは、誰もが知っているように Thank you です。thank は「感謝する」という動詞で、この使い方が圧倒的のようです。が、砕けた言い方だと many thanks とか thanks a lot と言うこともあります。多分この場合は thank が名詞として使われています。

一方スペイン語だとありがとうは「グラシアス」フランス語のありがとうは「メルシー」で、一般的に使われている表現が名詞形になっています。スペイン語だと「ムーチャス・グラシアス」、フランス語だと「メルシー・ボクー」と言うように「たくさん」という意味の形容詞が付くことでそれがわかります。スペイン語だと「ミル・グラシアス」「ムチシマス・グラシアス」というような少々大げさな表現も割りに良く使われていました。

フランス語で動詞を使ったありがとう

ではスペイン語やフランス語では、英語のように動詞を使ったありがとうはあるか、と言うと、ちゃんと使われています。

スペイン語で代表的なのは「アグラデスコ・ムーチョ」というような言い方。これは agradecer 「感謝する」という動詞です。一方フランス語では「ジュ・ヴ・ルメルシー」というような言い方をよく耳にします。フランス語はスペイン語と違って主語を省略しませんから「私はあなたに感謝します」と実直に表現する言葉です。

でもスペイン語やフランス語でこうした動詞を使った「ありがとう」を言う時は、どちらかと言えば少し丁寧な表現、英語で言うと I appreciate のような表現になるのではないかと思います。でも「グラシアス」や「メルシー」ばかりでは、ちょっと軽く感じられることも多いですから、こうした動詞を使った「ありがとう」も覚えておくと、使ったときに相手が受ける印象が違ってくるのではないかと思います。

逆に、軽くてよい時に使うと文語体でしゃべっているような印象を与えてしまいますから要注意ですが。

ar はどこへ行った?

スペイン語の動詞には大きく分けて3つのタイプがあります。ar 動詞、ir 動詞、er 動詞がそれです。これらは語尾を元に分けられていますが、それぞれの中に不規則な変化をする動詞が含まれています。それぞれの動詞は、例えば sacar、venir、comer などがあります。つまりスペイン語の動詞は語尾の形で分類されて、不規則動詞はそれぞれに含まれる、という形になっています。

筆者のフランス語の先生エミリーが言いました。

「フランス語の動詞には大きく分けて3グループあります。」

ふむふむ。スペイン語と同じじゃないか。

「第一グループの語尾が er で終わる動詞と、第二グループの ir で終わる動詞と…」

お、まったく同じだぞ!次は ar 動詞だな!

「それと不規則変化をする動詞です。」

「!!! ar 動詞はないの?三つ目が不規則動詞?だったら2種類だけでスペイン語より楽じゃん!」

と思った筆者は甘かったです。フランス語の動詞には、er じゃなくて re で終わるものもありますし、不規則変化をする動詞がスペイン語よりも多いような気が…。スペイン語の haber(英語の have ) に該当するフランス語の単語、avoir が超不規則なのはお互い様だとしても、poder(英語の can)に相当する pouvoir の一人称単数がなぜ peux で、疑問文で主語が後ろになると puis になっちゃうの?これは poder が puedo (一人称単数形)になるどころの変化ではありません。

pouvoir の現在形の活用

je peux, je puis
tu peux
il peut
nous pouvons
vous pouvez
ils peuvent

ちなみにフランス語の動詞の分類は er が「第一群規則動詞」 ir が「第二群規則動詞」その他が「不規則動詞」という名前で呼ばれているようです。英語やスペイン語の解説書だと、日本語でなんと言うのかわからないので、東京に到着してから簡単な文法書を仕入れました。そのほかにもいくつか気になっている本もありますから、そのうち紹介したいと思います。