大切なこと

前に書いたように、現在筆者の職場には、ソルボンヌ大学で勉強する通称ビンタがボランティアとして来ています。彼女も休みが終わり、週末にはパリに戻るのですが、ちゃんとフランス語を勉強している人が近くにいると便利ですねえ。「これはどういうの?」と聞いてすぐ説明してもらえるのと、自分で辞書を引くのとでは、やっぱり理解が違います。

さて今回のお題は「一番大切なことは○○です」という表現です。セネガルのお役人さんは結構形式にこだわったり、過去のやり方を変えたがらなかったりして、仕事の上でのやり取りでは苦労が絶えません。「今までこうやってきたから、これでいいんだ」みたいなことを言われると、「そうじゃないだろ?一番大切なことは…」と返したくなるのですが、スペイン語から類推して言おうとして、はた、と困ってしまいました。

「一番大切なこと」というのは、もちろん最上級を使って表現されます。最上級の一般的な形は、

定冠詞+比較級

で、これはスペイン語もフランス語も同様です。じゃあ比較級とは何ぞや?と言われてしまいそうですが、基本的には「より~である」を示す形だと

西語 más + 形容詞
仏語 plus + 形容詞

となります。ですから最上級の場合は、男性形を例に取ると

西語 el más + 形容詞
仏語 le plus + 形容詞

という形になります。主語を修飾する形で、「Aが一番大切である」と言うには

西語 A es el más importante.
仏語 A est le plus important.

になります。なお仏語の important は女性形だとスペイン語と同じスペリングの importante に変化します。

さてここまでは基本的に西語・仏語ともまったく同じと考えられるのですが、筆者が作りたかった文章は「一番大切なこと」を強調して、主語に持ってくる表現です。

スペイン語だと

Lo más importante es A.

となって、lo という中性の冠詞を使用します。これが「こと」という漠然としたものを指してくれています。さてでは、中性の冠詞がないフランス語ではなんと言うのか?というところで筆者はつまってしまいました。

ビンタが「一番似ている」と教えてくれたのは次の文です。

L’important est A.

plus がおっこちていますし、頭に付いているのは le で男性形の冠詞です。なぜこうなるかと言いますと、この場合の important は、「重要なこと」という意味の男性名詞で、形容詞ではないからです。つまり見かけはスペイン語と似ていますが、文法的にはかなり異なっている、ということです。

なおフランス語の場合Aのところには de + 動詞の原型 または que + 接続法が来ます。

またスペイン語、フランス語どちらにも英語の It is important that のような構文もあり、それぞれ次のようになります。

Es importante que + 接続法
Il est important que + 接続法